音の創造

音楽の癒し効果を考えるとき、音そのものがどのように生成されるかを考えることは重要な問題です。

新しい形の「音波」

一般的に、私達は「音波は縦波である」と教えられてきました。しかし慶応義塾大学教授の武藤佳恭教授は、オルゴールを用いた実験から、音は電磁波のような「横波」によっても伝搬するのではないか、と考えました(次世代センサ 2006年7月号)。


プラスチックの下敷きを曲面状に曲げて、オルゴールに接触させたとき、音が大きく豊かに響き、その音は大変遠くまで届きます。武藤教授はこの信号を100m離れた地点において、超低周波アンテナ(電磁波としてはとても低い周波数だが、音波としては高い周波数をキャッチするもの)によって、電磁波として測定することに成功しました。

同様の原理の装置(仮に横波スピーカーと呼ぶことにします)を用いて、空気中での高周波の伝達について調べました。高解像度マイクロホンを、100KHzまで再生能力のあるスピーカーから1m離して設置し、周波数特性を調べました。すると、既存スピーカー(縦波スピーカー)のみでは、高域に大きな減衰が見られる(-50db at 16k)のに対し、横波スピーカーと組み合わせたテストでは、高域の減衰が大幅に減少しました(-20db at 16k)。(下図参照)

transverse wave

エックス線や電磁波など、横波は皮膚、細胞に入って行くことが出来ます。物理学では、周波数が高ければ高い程、エネルギーは大きくなることが分かっています。音波に対してもこれが当てはまるとすれば、仮に高い周波数が耳で聴こえていないとしても、それが横波で伝搬されれば、ダイレクトに人間の細胞に吸収されるかもしれません。

ここで、以下の様な仮説が成り立ちます。

音楽の中の高周波は、横波により伝搬され、人間の細胞に吸収され、脳の関与しない環境下でも人体に何らかの変化を及ぼす可能性がある。

横波の生成

地震が起きた時の地球のように、固体が、その形を永久に戻らない状態にするには達しない程度の応力が働いたとき、「弾性波」というものが生成されます。弾性波は、P波(縦波)とS波(横波)からなり、これは分子間引力の変移により起こるものです。

もし応力が大きすぎると、固体の形は元に戻らなくなってしまいます(紙を折り曲げた時のように)。つまり分子間引力が切れてしまって弾性波が伝達できない状態になっていると言えます。

これは、先ほどのオルゴールの実験に用いた下敷きにも言えます。形が変わってしまわない程度の力が働いているという状態、これは、バイオリン、ピアノ・・実際、あらゆる楽器のボディの形状に見ることが出来ます。

さらに、これは、楽器の形状だけではなく、どのように楽器を演奏するか、ということにも大きく関わってきます。もし弦をとても激しく弾くならば、音は明るくエキサイティングになるでしょうが、組成変移の限界を超えた力がかかってしまって弾性波が発生できない、ということにもなります。そうなると、横波成分も発生せず、サウンドセラピーの観点からすると効果的でない、ということが言えます。一方、弦を優しく弾くならば、弦が弧を描くようにゆるやかに振動し、横波を生成し、その音色が細胞に届くと考えられます。

どのような旋律が音の癒しにおいてふさわしいか、ということに関してはまだまだ研究の余地が残されていますが、これまでの経験によれば、全般的に上昇形の旋律の方が、下降形の旋律よりもより良い癒しの結果を得られているようです。